生活費に余裕がなくなると、家賃の支払いが負担になるケースがあります。
そのような状況に対し、自治体が一定期間、家賃相当額を支援する制度があります。
それが 住居確保給付金 です。
住居確保給付金は、生活費全体を補助する制度ではなく、家賃に特化した支援制度です。
生活保護や公営住宅とは別の制度として位置づけられており、対象条件や支給内容があらかじめ定められています。
この記事では、住居確保給付金について、次の点を整理します。
- どのような人が対象になるのか
- いくら・どれくらいの期間、支援を受けられるのか
- 申請の流れと、事前に確認しておきたい注意点
住居確保給付金とは?
制度の概要
住居確保給付金は、家賃を払えなくなるおそれがある人に対し、一定期間、家賃相当額を支援する制度です。
生活全体を支援する制度ではなく、家賃に限定した支援である点が特徴です。
この制度のポイントは、次の3点です。
- 生活費の支援ではない
食費や光熱費などに使えるお金は支給されません。
支援の対象は、あくまで家賃のみです。 - 住居を失うことを防ぐための制度
失業や収入減などにより、
「このままでは家賃が払えなくなる」という段階で利用されます。 - 支給は原則、大家や管理会社に直接行われる
申請者の口座に現金が振り込まれる制度ではありません。
ひとことで表すと、
**「家を追い出されないための、期限付きの家賃サポート制度」**です。
生活保護や公営住宅との違い
住居確保給付金について、次のような誤解が見られますが、いずれも正確ではありません。
- 生活保護と同じ制度ではありません
- 何にでも使える給付金ではありません
- 働いている人が使えない制度ではありません(条件次第で対象になります)
制度の立ち位置を簡単に整理すると、次のようになります。
- 生活保護より前の段階
- 生活が完全に行き詰まる一歩手前
- まだ立て直しが可能な人向けの制度
この制度は、厚生労働省 が、
「住居を失うことで生活全体が急激に崩れる状況」を防ぐ目的で設けています。
どんな人が対象になる?使えるかどうかの目安
支給対象者の基本的な条件
住居確保給付金は、
**「すでに生活が破綻している人」ではなく、
「このままだと家賃が払えなくなるおそれがある人」**を対象とした制度です。
言い換えると、
完全に行き詰まった後ではなく、行き詰まる一歩手前の段階で使われる制度です。
支給対象となるかどうかは、主に次の4点で判断されます。
- 収入が一定以下であること
- 貯金(資産)が多すぎないこと
- 賃貸住宅に住み、家賃の支払いが発生していること
- 仕事や収入を立て直す意思があること
収入以外に見られるポイント(貯金・住まい・状況)
収入について
収入の目安は、その地域の生活保護基準に近い水準です。
ただし、生活保護と同じ水準まで下がっている必要はありません。
収入基準は、次の条件によって変わります。
- 住んでいる地域
- 世帯人数
失業していなければ対象にならない、ということはありません。
- 失業中の場合は、対象になりやすい
- 収入が大きく減った場合
(派遣切り、シフト減、フリーランスの案件減など)
対象になる可能性があります
貯金(資産)について
貯金があること自体で、即対象外になるわけではありません。
判断の目安は、
**「生活費を数か月まかなえる程度を大きく超えていないか」**です。
- 数十万円程度の貯金がある → 直ちに対象外にはならない
- 明らかに生活に余裕がある → 対象外となる可能性が高い
住まいについて
この制度は、家賃の支援を目的とした制度です。
そのため、次の点が前提となります。
- 賃貸住宅に住んでいること
- 実際に家賃を支払っている、または支払う予定があること
持ち家の場合や、実家暮らしで家賃が発生していない場合は、原則として対象になりません。
今後の状況・意思について
住居確保給付金は、受給中に何もしなくてよい制度ではありません。
原則として、次のような行動が求められます。
- 求職活動
- 収入回復に向けた行動
ただし、「今すぐ正社員として働くこと」を求められるわけではありません。
体調や個別の事情は考慮されます。
【チェック表】自分も対象になりそうか簡単に確認
※あくまで目安です。
※最終的な判断は自治体が行いますが、「相談に行く価値があるか」の判断材料になります。
住居確保給付金・対象チェック(簡易)
- チェックが多い場合
一度、自治体に相談する価値は高いと考えられます。 - 半分程度当てはまる場合
自治体の判断次第ですが、相談が無駄になる可能性は低いです。 - ほとんど当てはまらない場合
今回は対象外となる可能性が高いです。
| 家賃について |
|---|
| □ 賃貸住宅に住んでいる |
| □ 毎月、家賃の支払いが発生している |
| □ このままだと、家賃の支払いが厳しくなりそう |
「すべて当てはまる場合」は、次へ進んでください。
| 収入について |
|---|
| □ 失業した、または収入が大きく減った |
| □ 正社員以外(派遣・アルバイト・フリーランス)で働いている |
| □ 今の収入では、家賃と生活費の両立が難しい |
「1つでも」当てはまれば、対象となる可能性があります。
| 貯金(資産)について |
|---|
| □ 貯金はあるが、長期間生活できるほどではない |
| □ 家賃を払い続けると、数か月で厳しくなりそう |
※貯金がゼロである必要はありません。
| 今後の意思について |
|---|
| □ 仕事を探す、または収入を戻すつもりがある |
| □ ハローワークや支援機関の利用に抵抗がない |
| □ 何もしないまま給付だけを受けたいわけではない |
この意思は、ほぼ必須と考えられます。
いくら・どれくらいの期間、家賃を支援してもらえる?
支給額の考え方(全国共通/自治体差)
住居確保給付金の支給額は、全国一律ではありません。
ただし、制度の考え方(ルールの枠組み)は全国共通です。
支給額の基本的な考え方は、次のとおりです。
- 今住んでいる地域で、生活保護を利用した場合の「家賃の上限額」まで
- この上限額が、そのまま住居確保給付金の支給上限になります
つまり、支給額は次のように決まります。
- 実際の家賃が上限額以下の場合
原則として、家賃相当額が支給対象になります - 実際の家賃が上限額を超える場合
上限額までが支給対象となり、超えた分は自己負担になります
例として、次のようなケースがあります。
- 上限額:53,700円
- 実際の家賃:60,000円
→ 支給されるのは 53,700円まで
この上限額は、
- 市区町村
- 世帯人数
によって異なります。
なお、上限額の設定は、
厚生労働省 が定めた基準をもとに、
各市区町村が地域の家賃水準や世帯構成を反映して決めています。
支給期間はどれくらい?延長はある?
支給期間は、原則として3か月です。
ただし、条件を満たす場合は「最大で9か月まで」延長が認められます。
延長が認められるかどうかは、次の点が確認されます。
- 求職活動を行っているか
- 収入回復に向けた行動を取っているか
延長は自動ではなく、状況確認のうえで判断されます。
この制度は、長期間にわたって家賃を支援し続けるものではなく、
生活を立て直すための猶予期間を設ける制度です。
【具体例】都会と地方ではいくら違う?
支給上限額は、地域によって大きく異なります。
ここでは、東京都新宿区と秋田県秋田市を例に、違いを整理します。
東京都新宿区(23区内の例)
住宅扶助基準額をもとにした、月額の支給上限の目安は次のとおりです。
| 世帯構成 | 支給上限(月額) |
|---|---|
| 単身世帯 | 53,700円 |
| 2人世帯 | 64,000円 |
| 3人以上世帯 | 69,800円 |
例
- 1人暮らしで家賃が60,000円の場合
上限である 53,700円までが支給対象になります。
実際の支給額は、収入や資産の状況によって調整される場合があります。
(参考:新宿区役所HP「住居確保給付金の支給について」)https://www.city.shinjuku.lg.jp/fukushi/fukushi01_002056_00002.html
秋田県秋田市(地方都市の例)
秋田市における支給上限の目安は、次のとおりです。
| 世帯構成 | 支給上限(月額) |
|---|---|
| 単身世帯 | 32,000円 |
| 2人世帯 | 38,000円 |
| 3〜5人世帯 | 42,000円 |
| 6人世帯 | 45,000円 |
| 7人以上 | 50,000円 |
例
- 単身世帯であれば、上限は 32,000円
- 2人世帯であれば、上限は 38,000円
(参考:秋田市HP「住居確保給付金支給事業」)https://www.city.akita.lg.jp/kurashi/okomarinokata/1006020/1025008.html
都会と地方の差の目安
| 世帯構成 | 新宿区 | 秋田市 |
|---|---|---|
| 単身世帯 | 約53,700円 | 約32,000円 |
| 2人世帯 | 約64,000円 | 約38,000円 |
| 3人以上 | 約69,800円 | 約42,000円〜 |
このように、
都市部と地方では、1.5〜2倍近い差が出ることがあります。
これは、地域ごとの家賃水準の違いを反映した設計です。
申請の流れと、実際の手続き感
どこに相談・申請すればいいのか
住居確保給付金の申請は、ハローワークではありません。
最初の窓口は、市区町村の福祉系の窓口です。
自治体によって名称は異なりますが、主に次のいずれかになります。
- 生活支援課
- 生活福祉課
- 自立相談支援機関
- 自立支援窓口
- くらし・仕事相談窓口
窓口では、
**「住居確保給付金について相談したい」**と伝えれば対応してもらえます。
制度自体は 厚生労働省 の仕組みですが、
実際の相談・申請・審査はすべて市区町村が行います。
申請の基本的な流れ
住居確保給付金は、いきなり申請書だけを提出する制度ではありません。
基本的な流れは次のとおりです。
- 窓口で相談
- 収入、家賃、仕事の状況などを確認されます
- 対象になりそうかを、その場で大まかに判断されます
- 必要書類の案内
- 申請できそうな場合、必要な書類の説明があります
- その場で渡される場合もあれば、後日持参する場合もあります
- 申請書の提出
- 書類がそろった段階で、正式な申請となります
申請に必要なもの一覧
必要書類は自治体によって多少異なりますが、共通するものは次のとおりです。
- 本人確認書類(運転免許証など)
- 賃貸借契約書(家賃が確認できるもの)
- 家賃の支払い状況が分かる資料(銀行通帳のコピーや、家賃の領収書など)
- 収入が分かる書類
- 給与明細
- 失業中の場合は、直近の収入が分かるもの
- 預貯金の状況が分かるもの(通帳など)
- 離職票や退職証明書
- 求職状況の申告書
書類が一部そろっていない場合でも、
その場で申請不可になるというより、後日提出を前提に進むケースが多いのが実情です。
申請から支給までの期間の目安
申請後は、自治体による審査が行われます。
- 審査期間の目安:2週間〜1か月程度
- 混雑状況により、前後する場合があります
支給が決定した場合、
家賃は原則として大家や管理会社に直接支払われます。
毎月自動的に支給されるのではなく、
状況確認を行いながら支給が続く形になります。
正直、手続きはどれくらい大変?
住居確保給付金の手続きは、次のような位置づけです。
- ワンタップで完結する制度ではありません
- ただし、生活保護よりは手続きが軽い傾向があります
- 窓口の担当者と相談しながら進める前提の制度です
書類の準備は必要ですが、
すべてを一人で抱え込む形ではなく、相談型の制度と考えられます。
- 市区町村の福祉系窓口へ相談
- 対象になりそうかの確認
- 必要書類をそろえて申請
- 審査(2週間〜1か月程度)
- 家賃が大家や管理会社に支給される
(おまけ)最大9か月たっても生活が立て直らなかったら?
支給期間終了後はどうなるのか
住居確保給付金は、最大9か月で支給が終了する期限付きの制度です。
支給期間が終わった時点で、生活が立て直せていない場合でも、
そこで支援が打ち切られ、放り出されるわけではありません。
この制度は、次のような段階設計で運用されています。
- 住居確保給付金で立て直せる場合は、ここで支援終了
- それでも生活が成り立たない場合は、次の支援へ切り替え
次に案内される可能性のある支援
支給期間終了後に、状況に応じて案内される可能性がある支援は、主に次のとおりです。
生活保護(最後のセーフティネット)
現実的な選択肢として、生活保護の説明を受けるケースがあります。
生活保護では、次のような支援が対象になります。
- 家賃
- 生活費
- 医療費
- 光熱費
「働けない」「仕事が見つからない」といった事情は、個別に考慮されます。
なお、
住居確保給付金を利用したからといって、自動的に生活保護に切り替わるわけではありません。
必要な場合に、制度の説明が行われるという位置づけです。
就労支援・自立支援の継続
すでに相談を行っている場合、次のような支援が継続されることがあります。
- 自立相談支援機関による継続支援
- 就労準備支援(すぐに就職が難しい人向け)
- 職業訓練や就労移行的な支援
フルタイムでの就職が難しい場合でも、
段階的に生活を立て直すための支援が検討されます。
家賃負担を下げる方向での調整(ケースによる)
自治体や状況によっては、次のような相談が行われることもあります。
- 家賃の安い物件への住み替え相談
- 公的住宅の案内(空き状況次第)
これらは地域差が大きく、
必ず案内されるものではありません。
「ここで終わり」にはならない理由
日本の公的支援制度は、
一度の制度で解決しなければ終了、という設計ではありません。
基本的な考え方は、次のとおりです。
- 自立できる可能性がある段階では、軽い支援
- それでも難しい場合は、支援の内容を段階的に切り替える
この考え方は、厚生労働省 が所管する制度全体に共通しています。
なお、よくある誤解として、
「住居確保給付金を使い切ったら、生活保護が通りやすくなる」という考えがありますが、
制度上、そのような加点や優遇はありません。
- 点数制度はありません
- 実績による優遇もありません
- 「9か月使ったから認定される」という仕組みではありません
生活保護の判断基準は、
あくまで申請時点の生活状況です。
ただし・・・
住居確保給付金を利用した場合、次の点が事実として整理されています。
- 収入状況
- 資産状況
- 家賃の状況
- 就労状況
- 求職活動の履歴
これらが時系列で把握されているため、
生活保護で時間がかかりやすい実態確認が、すでに進んでいる状態になります。
また、
- 家賃支援を受け
- 求職活動を行い
- それでも生活が改善しなかった
という経過が、
主観ではなく、制度上確認された事実として説明できる点も特徴です。
住居確保給付金と生活保護は、
多くの自治体で同じ課、または近い窓口で扱われており、
別物として切り離されているというより、段階的に見られている支援と考えられます。
そういう意味では・・・

住居確保給付金を利用したこと自体が、
生活保護の申請通過を有利にするわけではありませんが、
「支援を受けても生活が成り立たなかった」という経過が明確になることで、
次の支援を検討する段階に進みやすくなることはあるかも。
まとめ
住居確保給付金は「生活に困っている人が知っておきたい現実的な選択肢」
住居確保給付金は、家賃に特化した期限付きの支援制度です。
生活費全体を補助するものではなく、家賃の支払いを一定期間支えることで、生活が大きく崩れるのを防ぐ目的で設けられています。
この制度は、生活が完全に立ち行かなくなった後に使うものではありません。
「このままだと家賃が厳しくなる」段階で利用することを想定しています。
支給額や期間、対象条件はあらかじめ決められており、
誰でも無条件に使える制度ではありません。
一方で、条件に当てはまる場合は、家賃負担を一時的に軽減できる可能性があります。
住居確保給付金は、
知っているかどうかで、生活において取り得る選択肢が変わる制度です。
利用するかどうかは別として、状況に応じて判断できるよう、
制度の内容を把握しておくことには意味があります。
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